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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)568号 判決 1970年1月29日

上告人

中村順市

代理人

古井戸義雄

村瀬尚男

被上告人

秋田光子

主文

原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

本件訴を却下する。

訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人古井戸義雄、同村瀬尚男の上告理由について。

上告人は、訴外小林武雄に対する本件仮差押決定正本に基づき、昭和四二年一二月二六日本件物件につき仮差押執行をしたが、小林が、昭和四三年五月一日午前一〇時名古屋地方裁判所において破産宣告を受けるに至つたことは原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の適法に確定するところであり、本件記録に徴すれば、被上告人は、昭和四三年七月二日本件物件が被上告人の所有に属するとして本件第三者異議の訴を提起したものであることが明らかであるところ、原審は、本件物件は被上告人が買い受け所有するものであるから、小林が破産宣告を受けたからといつて、これがため本件物件が破産法七〇条所定の破産財団に属する財産となる筋合ではない旨判断して被上告人の本訴請求を認容している。

しかし、右事実によれば、上告人は、本件仮差押決定正本に基づき、昭和四二年一二月二六日債務者小林に対し本件物件につき仮差押執行をしたが、昭和四三年五月一日同人が破産宣告を受けるに至つたのであるから、本件物件は、破産法七〇条にいう破産財団に属する財産となつたもので、上告人の右仮差押は同条により破産財団に対しては効力を失つたものというべく、その後において右仮差押執行の排除を求めて提起された本件第三者異議の訴は、その利益を欠き、不適法として却下を免れない。被上告人としては、本件物件の所有権を主張してその返還を求めるためには、破産管財人を相手方として破産法八七条所定の取戻権を行使すべきものである。論旨は理由がある。

よつて、原判決を破棄し、第一審判決を取り消して被上告人の本件訴を却下することとし、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)

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